Oculus Riftの音響が優れている理由

2017年8月11日

Oculus Riftはヘッドフォンを標準装備していますが、それ以外にも他のVRヘッドセットと比べて音響機能が優れている点がいくつかあります。

ヘッドフォンの装着が簡単

Oculus Riftは開放型のヘッドフォンをヘッドセット部分に初めから搭載しています。このおかげで単にヘッドセットをかぶるだけでヘッドフォンも同時に装着することができ、HTC VIVEやPlaystation VRのように、わざわざ外付けイヤホンを手で耳にねじ込む必要がありません。

ヘッドフォンは軽く耳に被さるように設計されており、位置も自由自在に調整できるようになっています。このようにOculus Riftはヘッドフォンを内蔵することで、ヘッドセットの装着性を向上させています。

実は音質も良い

実はこのヘッドフォン、単体のヘッドフォンとして見ても高い性能を持っています。音楽を聴いてみるとよく分かるのですが、高めの周波数の表現力が非常に豊かで抜けが良く、いわゆるハイレゾヘッドフォンに分類できるほどです。

この表現力の豊かさは後に説明する3Dオーディオの効果を高めるためで、計算で得られた反射・残響音を精度高く再生することに貢献しています。

残念ながらOculusはこのヘッドフォンの周波数特性を公開していないため、何に匹敵する性能、と定量的にに言えることは無いのですが、実際に試してみると実感できるはずです。

ゲーム向け3Dオーディオ機能を標準装備

OculusはVisisonics社からRealspace 3D Audioのライセンスを受けており、Oculus Rift向けソフトの開発キットであるOculus SDKを使ってソフトを開発すると、非常に高度な3Dオーディオ機能を利用することができます。

3Dオーディオとは?

3Dオーディオとは、仮想空間上のある位置に音源を設置したときに、その位置から聞こえているかのように音声波形を調整する機能です。オブジェクトベースのオーディオと呼ばれることもあります。

この機能を使うと、音源が右寄りにあればヘッドフォンの右から聞こえてきますし、左にあれば、ヘッドフォンの左から聞こえてきます。これでけ聞くと大したことない機能に思えます。

この機能が無い場合、音源をニュートラルな状態に置くと、感覚的には頭の中から音が出ているように聞こえます。これはVRに限らず一般的な音声を普通のヘッドフォンで聞いている状況と同じです。

では、そこから真正面から音が聞こえるようにしたい場合はどうすれば良いでしょうか?これは左右のバランスを単に調整するだけでは実現不可能ですが、可能にするのが3Dオーディオ技術になります。ポイントは頭部伝達関数(HRTF)にあります。

頭部伝達関数(HRTF)とは?

「特定の位置にある音源から、別の位置にある人間の頭部(耳)に届くまでの音の変化」を数式で表したものです。つまり、音声に計算処理を加えることで、音が特定の座標の位置から聞こえるように自由に加工する事ができます。

これにより、普通にヘッドフォンで聴くと頭の中からなっているようにしか聞こえない音を、まるでヘッドフォンをつけていないかのように、かつ後ろや前から聞こえているように錯覚させることができます。

どんなソフトで体験できる?

Oculus SDKで作られたソフトは大抵3Dオーディオに対応していますが、筆者が体験した中で効果がわかりやすかったのはRobo Recallです。ロボが正面や後方で喋ったり弾を放ったりすると、自然に方向が感じられます。オープニングデモでも音声が前方から流れるのですが、思わずヘッドフォンをしていることを忘れるほどです。

動画向け3Dオーディオ機能にも対応

Oculusは他にもSpatial Workstationと呼ばれる動画向け3Dサラウンドのオーサリングソフトを無料で公開しています。このソフトは元々Two Big Ears社が販売していたのものを会社ごと買収し、無料化したものです。

動画向けの場合でも元となる技術は同じですが、多数のマイクを配置して同時に録音した音声データを利用します。この多数の音声データを再生時に計算しやすいよう8chの音声データ(もしくは独自フォーマット)に変換し、再生時には頭の向きに応じてリアルタイムに波形を計算し直します。

このツールそのものはOculus Rift向け動画を作成することを目的としたものですが、大抵の場合は一般的な形式(Facebook360形式)で出力しますので、実はOculus Rift以外のVRプラットフォームでも再生することができます。

手持ちのVR機器で3Dオーディオを体験してみたい

動画の3Dオーディオであれば色々なVRプラットフォームで楽しむことができますので、興味があるなら試してみると良いでしょう。

WithinJauntなどが3Dオーディオに本格的に対応したVR動画を配信しています。Google Cardboardのような簡易VRでもイヤフォンさえつければ雰囲気は楽しめます。


どんな動画がおすすめ?

手始めに音楽の動画を見てみると良いと思います。

Within

WithinではU2 Song For Someoneがオススメです。色々な方向から歌や楽器が聞こえてきて音の定位を感じることができます。同じ動画はYoutubeでも閲覧できるようですが、音声はWithinアプリで見ないとクオリティが良くありません。

Jaunt

JauntではPaul McCartney, Live and Let Dieがオススメです。もとはDolbyの最新規格Dolby Atomos用の音声をVR用にしたもののようです。他にもいくつかDolby Atomosのロゴが付いている動画があります。こちらもアプリから視聴して下さい。

まとめ

音響機能は地味であまりVRと一緒に語られる事は少ないですが、VRの体験を向上させる上で実は重要なポイントです。

OculusはVR向け音響技術を自社プラットフォームに組み込んでおり、この技術の恩恵が受けられるのはOculusの提供する環境で作られたコンテンツをOculus Rift上で体験した場合だけです。またOculus Riftのハードウェア自体もこれら音響技術に最適化されています。

他のプラットフォームでも、良いイヤフォンを用意して、音響に注力されているコンテンツであれば体験を同等にできるでしょうが、Oculusはプラットフォームとして標準サポートしていて体験を底上げできているのが最大の利点であると言えます。