老舗のツールOculus Tray Tool(OTT)の紹介
2016年頃から広く使われているOculus Tray Toolについて紹介します。Oculus Rift/Oculus Rift Sユーザには非常に便利で手放せないソフトです。またOculus Linkを使う場合にも活躍します。
何をするためのソフト?
Oculus Tray Tool(OTT)は、以下のような設定を行うのがメインの機能になっています。
- Asynchronous Spacewarpの有効無効切り替え
- スーパーサンプリング(画質)の設定
- CPU動作優先度の設定
それぞれの設定はソフトごとに定義することができますので、性能に余裕のあるソフトを動かす際には画質をいつもより上げる、性能に余裕が無い場合は画質を下げる、といった柔軟な設定をすることが可能になっています。
Oculus Tray ToolはOculusランタイム自身が持つデバッグ機能を呼び出すツールになっており、VRアプリケーションが動作中であっても動的に設定を切り替えることも出来ます。
他にも安定性向上のための設定を細かく変更できたりします。
セットアップ方法
Oculusのフォーラムからセットアッププログラムをダウンロードします。この記事執筆時点での最新は0.86.3です。
ダウンロードしたセットアッププログラムを起動するの次のような画面になります。
Nextを選び続けるとセットアップが完了します。
設定方法
Game Settings
Oculus Tray Toolを起動すると次のような画面になります。
この画面で設定できるのはソフトごとの設定では無く、全てのソフトに適用されるデフォルトの設定になっています。
- Profiles – View & Edit
- 後述するソフトごとの設定を行います。
- Default Super Sampling
- 表示される解像度(=画質)の設定です。アプリ自身が持っている設定にかけ算で適用します。
- 0 の場合は何も設定しません。Oculusランタイムが負荷に応じて自動的に設定するのに任せます
- 1.0が通常の画質になっており、それより低い値にすると画像がぼける代わりに負荷が軽く(フレームレートが90に近づき動きがなめらか)なり、高い値にすると画像がよりくっきり鮮明になる代わりに負荷が高く(フレームレートが下がりカクカクしていく)なります。
- どの値が適切かは動作させるアプリケーションやPCの性能によって変わります。
- 実際に適用された値は Visual HUD – Pixel Density で確認できます。
- Default ASW Mode
- Asynchronous SpacewarpをOff、Auto、またはASW Onで45fpsに設定できます。
- ASWがAutoに設定されている状態でツールが起動します。
- HomeまたはVRアプリケーションでの変更は、すぐに有効になります。
- ASWの状態は後述のVisual HUDを利用して確認できます。
- プロファイル設定済のゲームを実行している場合、ASW設定はそのプロファイルの内容が反映されます。
- Mirror FOV Multiplier
- ヘッドマウントディスプレイに表示される内容と同じ物がWindowsデスクトップ上に表示されますが、この表示をどれだけ広い視界で描画するかを指定します。VRの画面を録画するような場合にこの設定を変更します。
- 0.00の場合は何も設定しません。
- 大きい値にすればするほど、より広い範囲が描画されます。
- Voice Commands
- 音声入力の機能を有効にするかを設定します
- Oculus Homeless
- Oculus Homeアプリを置き換えて表示しないようにします。
- システムファイルを書き換えるので利用には注意が必要ですが、元のファイルはバックアップされる用には鳴っています。
- Mirror Oculus Home
- Oculus HomeアプリのVR画面をWindowsデスクトップ上にも表示します。
- Visual HUD
- Oculusランタイムが持つデバッグ表示機能を有効にします。
- 処理落ちの状況を確認するのに特に有効です。
Profiles – ソフトごとの設定
View & Editを選択するとソフトごとにプロファイルを設定することが出来ます。
この画面には設定済のプロファイル一覧が表示され、新しく追加するには「Create New Profile」を選択します。
プロファイルの設定は以下のような画面になっています。
- Game/App
- Oculus Tray Toolが検出したOculus Home/SteamVRのアプリ一覧から対象となるアプリを選択します。非公式アプリに対してプロファイルを作成する場合はウィンドウ下側のBrowse…からExeファイルを直接選択します。
- Super Smapling
- 前述のDefault Super Samplingを参照
- ASW Mode
- 前述のDefault ASW Modeを参照
- Set Delay(ASW)
- ゲームの実行を検出してからASWを適用するまでに待機する秒数です。ゲームによっては、ASWの変更が早すぎると好ましくない場合があるため、この値を増やす必要がある場合があります。
- CPU Priority
- 通常よりも高い値に設定すると、このアプリケーションにCPUに処理がより多く割り当てられるようになります。これはゲームのパフォーマンスに役立ちます。「Default」に設定すると、CPUの優先順位はゲーム開始時のままになります。それ以外の設定は、そのPriorityで既にゲームが実行されている場合でも適用されます。
- Set Delay(CPU Priority)
- ASWの場合と同じことをCPU Priorityに対して設定します。
- Detection
- アプリケーションの起動を検出する方法を設定します。
- WMIがデフォルトです。これにより、CPUの消費量は減りますが、精度は低下します。
- タイマはより多くのCPUを消費しますが、より正確です。最初はWMIを使用してください。
- 特定のアプリケーションのプロファイルを適用する際に問題がある場合は、Timerに切り替えて、それがうまくいくかどうかを確認してください。
- Oculus Tray Tool Libraryビューから直接ゲームを起動すると高精度に起動を検出できます。
- Exe Path
- 対象となる実行ファイルのファイルパスです。Browse… から変更できます。
- Screen Mirror
- アプリケーションが起動した際にウィンドウの状態を指定します。
- Defaultはこれまで通り表示、Minimizedにするとウィンドウが最小化された状態でアプリケーションを起動します。
Tray Tool
- Start with Windows
- Windowsの起動時に自動的にOculus Tray Toolを起動します。
- Start minimized
- タスクトレイに最小化された状態で起動します。
- Use Audio Switcher
- 設定されたタイミングでスピーカーの出力先・マイクの入力元デバイスを切り替えます。
- Hide form Alt+Tab
- Alt+Tabの一覧にOculus Tray Toolが表示されないようにします。
- Minimize Tool on X
- ウィンドウ右上のXボタンを押したときに、Oculus Tray Toolを終了するのでは無くタスクトレイに最小化されるようにします。
- Enable HotKeys
- ホットキーを有効にします。
- Check for updates on startup
- 最新バージョンが無いかを起動時に確認します。
- Font Size
- Oculus Tray Toolの文字サイズを変更します。
Power Options
電源プランを変更するとPCの性能を低下するのが防げるとともに、Oculusが誤動作を引き起こす省電力設定も無効にすることが出来ます。
- Set Power Plan on Start
- Oculus Tray ToolまたはOculus Homeの起動時に使用する電源プランを設定します。Riftの性能を引き出すためには、より高性能な電源プランを使うべきです。
- 注意:「高パフォーマンス」の電源プランでは、一部のデバイスのスリープ状態の解除が無効になります。これには、Touchコントローラが含まれる場合があります。その場合はコントローラのバッテリ電力を消費し続けてしまう可能性があります。
- Set Power Plan on Exit
- 上記と同様に、このオプションでは、Oculus Tray Tool/Oculus Homeを閉じたときに設定する電源プランを指定できます。
- Apply Power Plan on
- 電源プランの適用タイミングを、Oculus Homeの起動終了時、OTTの起動終了時どちらにするかを選択します。
- USB Selective Suspend
- これは [Set Power Plan on Start] で設定した内容など、現在設定されている電源プランに関連付けられており、選択した電源プランによっては変更される場合があります。OTTが電源プランを変更すると、そのプランのUSB Selective Suspend設定がチェックされ、このドロップダウンリストに現在の状態が表示されます。
- これを [Dsiabled] に設定して、WindowsによってUSBデバイスへの電力が切断され、Riftが切断されるのを防ぐことができます。
- 特定の電源プランに対してUSB Selective Suspend値を設定すると、手動で設定しない限り変更されません。
- 注意:これにより、Touchコントローラのバッテリが消費される可能性があります。
- Fresco Registry Tweaks
- Oculusが推奨しているInateck製のUSB3拡張カードを使用している場合は、これを [Enabled] に設定すると、Fresco Logicドライバが調整され、バッファがいくつか増加します。これは、トラッキングにまつわる問題や切断される現象の対策に役立ちます。
- Inateckカードを使用していない場合、このオプションはグレー表示されます。
- この設定にはレジストリアクセスが必要なため、アプリケーションを管理者として実行する必要があります。
- Fresco Power Management
- 一般的には、デバイスマネージャですべてのUSBデバイスを調べて、「コンピュータでこのデバイスの電源をオフにして、電力を節約できるようにする」オプションを無効にすることが推奨されます。Inateckカード以外のほとんどのUSBハブでは問題なく動作します。何らかの理由で、Windowsが起動するたびに有効になります。
- Disable on startチェックボックスをオンにすると、ツールを起動するたびにこの機能が無効になります。
- この設定では、アプリケーションを管理者として実行する必要があります。
- Rift Power Management
- 次のデバイスのいずれかで電源管理が有効になっている場合、ログウィンドウに警告が表示されます。
- Rift本体
- Riftセンサー
- Xboxコントローラー
- Log Windowでこれらのメッセージのいずれかを右クリックし、[Disable Power Management] を選択します。これにより、報告されたすべてのデバイスで電源管理が無効になります。
- 次のデバイスのいずれかで電源管理が有効になっている場合、ログウィンドウに警告が表示されます。
参考:USBハブの省電力機能を無効にする方法
他のUSBデバイスで電源管理を無効にする場合は次のようにします。またセンサの電源管理を常に無効にすることもできます。
- 「マイコンピュータ」を右クリックし、「管理」を選択します。
- 左側のペインで、「デバイスマネージャ」を選択します。
- 右ペインの下までスクロールし、「ユニバーサルシリアルバスコントローラ」を見つけて、左の小さな矢印をクリックして展開します。
- 表示されたすべてのデバイスを右クリックし、「プロパティ」を選択します。
- 「電源管理」タブがある場合は選択します。表示されていない場合は、ウィンドウを閉じて、リスト内の次のデバイスに進みます。
- 「コンピュータでこのデバイスの電源をオフにして、電力を節約できるようにする」チェックボックスをオフにします。
Service & Startup
Oculusランタイムサービスの管理やOculus Homeの起動・表示方法を変更します。
- Oculus Service
- Oculusランタイムサービスの起動状態の表示と操作を行います。
- Upが起動中、Downが停止中です。
- 三角ボタンが起動、四角ボタンが停止、丸矢印は再起動です。
- Start Oculus service when tool starts
- Oculus Tray Toolの起動と同時にOculusランタイムサービスを起動します。
- Stop Oculus service when tool exists
- Oculus Tray Toolの終了と同時にOculusランタイムサービスを停止します。
- Restart Oculus service when computer wakes up
- スリープから復帰したときにOculusランタイムサービスを再起動します。
- スリープ復帰時にOculusの認識状態がおかしくなることがある場合に便利な設定です。
- Launch Oculus Home on service start
- Oculusランタイム起動直後にOculus Homeを起動するようにします。
- Launch Oculus Home on tool start
- Oculus Tray Tool起動直後にOculus Homeを起動するようにします。
- Close Oculus Home on tool exit
- Oculus Tray Tool終了と同時にOculus Homeも終了するようにします。
- Spoof CPU ID on tool start
- このチェックボックスをオンにすると、ツールの起動時にCPU IDが変更されます。アプリの起動時に 「お使いのコンピュータは推奨要件を満たしていません」 というメッセージが表示された場合にこれを回避するために使用します。
- オンにした場合、レジストリの「プロセッサ名文字列」値が変更され、AMD CPUを搭載している場合はi7-4770K@3.90 GHzまたはRyzen7 1700Xを実行しているとOculusサービスが認識するようになります。
- Windowsが再起動すると、常に古いCPU IDが復元されます。このチェックボックスをオフにすると、元のCPU IDが復元されます。
- この機能を使うにはOculusサービスを再起動する必要があります。ツールの起動時にこのチェックボックスをオンにすると、サービスが強制的に再起動されます。
- Set OVR Server Priority to Abobe Normal
- ランタイムサービスのOVRServer_x64.exeのCPU優先度を上げてパフォーマンスを引き出します。
- Send Oculus Home to tray when it’s minimized
- Oculus Homeのウィンドウを最小化した場合に、タスクトレイに格納されるようにします。
- 元に戻すには、タスクトレイのOculus Tray Toolアイコンを右クリックして「Show Oculus Home」をクリックするか、Oculus Tray Toolを閉じます
- Send Oculus Home to tray when it starts
- Oculus Homeを起動した直後に、タスクトレイに格納されるようにします。
最後に
このツールで特に重宝するのはOculusランタイムサービスの自動再起動と、Super Sampling(解像度)のソフト別設定でしょう。
特にグラフィックス性能に余裕がある場合、Super Samplingの値を上げると劇的に表示品質が向上しますから、よく遊ぶソフトがある場合はチューニングする価値があると思います。
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