HP Reverbはアリなのか

2020年1月14日

HP Reverbを入手して一ヶ月経過したので、同世代のVR HMDのスペックを比較しつつ、実際に使ってみて感じたことをレビューしていきます。

※2020年6月に後継機種であるHP Reverb G2が発表されましたが、これは初代HP Reverb(G1)の記事です。

はじめに

HP Reverbは2019年5月にHPから発売された、第2世代のWindows Mixed Reality向けVR HMDです。フルRGB型の液晶パネルを採用し、片目2160×2160という2019年末時点では最高レベルの解像度(業務用除く)を持つことがセールスポイントです。

Windows Mixed Realityは、Winsows10に標準で組み込まれているAR/VRのプラットフォームです。Oculus Questのように 外部センサ不要で6DoFに対応している ことがハードウェア面での特徴で、Windowsデスクトップとのシームレスな連携ができるのがソフトウェア面での特徴です。また、MicrosoftからSteamVRドライバも公開されており、 SteamVRのソフトも利用可能 です。

スペックの比較

同世代の主要VR HMDとスペックを比較すると以下のようになります。

販売元・モデル 解像度 視野角 パネル方式 リフレッシュ
レート
音響 重量 価格
HP Reverb 片目 2160 x 2160
(相当)
114° 液晶
(RGB配列)
90Hz オーバーイヤーイヤフォン 498g ¥55,880
Oculus Rift S 片目 1280 x 1440
(相当)
110° 液晶
(RGB配列)
80Hz 内蔵 500g ¥49,800
HTC VIVE Pro 片目 1280 x 1440 110° 有機EL
(ペンタイル配列)
90Hz 外付 555g フルセット
¥109,989

HMD単体
¥77,500

HTC VIVE Cosmos 片目 1440 x 1700 105° 液晶
(RGB配列)
90Hz 外付 702g ¥87,870
Valve Index 片目 1440 x 1660 130° 液晶
(RGB配列)
144Hz 外付 788g フルセット
¥138,380

HMD単体
\69,080

Samsung Odyssey+ (2018) 片目 1440 x 1600 110° 有機EL
(ペンタイル配列、
スクリーン
ドア低減フィルタ付き)
90Hz 内蔵 590g $299
(日本
未発売)

画質

液晶と有機ELの差による色味の違い

Oculus Rift(無印)やOculus Quest、VIVEシリーズに採用されている有機EL(OLED)では、色を表現する素子自体が発光しています。

一方、HP Reverbには普通の液晶が採用されています。液晶は表示素子自体は光らず、バックライトが後ろから表示素子を照らすことで映像を作り出しています。有機ELはバックライトに頼らない分、黒色が忠実に表現でき、コンストラスト性能が高くなります。

VR HMDではこの差が顕著に出ていまいます。有機ELと比べると液晶では薄い水色や肌色が白っぽく表示され、特にアニメセルのようなべた塗りの映像な場合には白飛びが起こりやすくなっています。

また、画面全体の輝度が高い場合はバックライトの影響で、映像自体が眩しく感じられ、目も疲れやすくなります。

これまでの液晶採用のHMDに比べると、HP Reverbに採用されている液晶の品質は高い印象はありますが、やはり色の薄さは気になります。

精細度

HP Reverbの特色は何といってもその解像度です。レビュー記事でも画像の精細さに関しては軒並み高評価を得ていたため期待してセットアップしました。

最初の印象

Windows Mixed Realityのセットアップやチュートリアルを進めながら、最初に抱いた感想は「あれ、スペックの割に他のHMDとあまり変わらないかな・・?」でした。

確かにペンタイルOLED特有の網目感はなく、ピクセルがぎっしり詰まっていて表示品質は上がったようには感じます。しかしながら、液晶RGBパネル特有の格子模様が完全に消えているわけではなく、プロジェクターでスクリーンに映した時のような映像になります。このあたりはOculus Rift SやValve Indexと大きくは変わりません。

さらに、HP Reverbの場合バックライトに微妙なムラがあります。一点を見つめて静止して言う場合にはまず気づけませんが、明るい背景を見ながら頭の向きを変えると、そのムラが視線の動きに追従し、網戸越しに見ているような感覚(スクリーンドア効果)がOLEDパネルと同じように現れます。

この時点では「正直失敗したかな?」と思いました。

大抵の環境では設定の変更が必要

Windows Mixed RealityやSteamVRのホーム画面の映像を見ていると、やけにジャギー(ピクセル境界のギザギザ)があることに気づきました。どうやら描画解像度が低いことで画像がギザギザし、それが網目感がなくなった分だけ、ごまかしがきかずに目立ちやすくなったようです。

そこで、いくつかのアプリで内部解像度を200%~250%に調整してみたところ、、、世界が変わりました。SteamVRのホームにあるおなじみの人形ですが、HP Reverbで解像度を上げて見ると、CG感が無くなり実際にそこに物があるかのように感じられます。

調べてみたところ、Windows Mixed Realityでは以下のようにして解像度が決まるようです。

まずHMDとして動作するネイティブ解像度は、Windows設定の「Mixed Reality」の中にある「解像度」の設定によって決まります。標準では自動設定になっていますが、Geforce GTX 1080Tiを使っていてもDot by Dotのネイティブ解像度設定にならないことがあるようです。

また、この設定はSteamVRのWindows Mixed Realityドライバからも参照されます。つまりSteamVRに認識されるネイティブ解像度(100%時の解像度)もこのMixed Reality上の設定が反映されます。(SteamVRはデフォルトでパネルが持つ解像度から140%増やした解像度を100%としていますが、Windows Mixed RealityではMicrosoft独自の基準で10%%の解像度を決めているように見えます。)

つまり、GPUの性能が十分に高い場合は、Windows Mixed Reality側の解像度設定を最高にした上で、SteamVR側の解像度を調整する必要があるといえそうです。

他のHMDとの画質比較

以下は海外YouTube動画で比較した画像の引用です。

Oculus Rift SやVALVE Indexでは「R」の曲線のドットが認識できますが、HP Reverbではドットがほぼ認識できなくなっています。また、色味に関してはValve Indexよりも色が薄く感じますが、Rift Sと大体同じであることが分かると思います。

フル版の動画は以下から視聴できます。ほかにもいろいろなゲームでの画質を比較しています。

装着感

形状はOculus Rift CV1(S ではない無印)と形状や構造が非常に似ています。

Oculus Questでは手持ちで使えるぐらいにツルの部分の上下方向に可動域が広くなっていましたが、HP Reverbではそこまで可動域は広くなく、Oculus Rift CV1と同等です。

また、左右のツルが前後に伸びるバネ状の機構も、Oculus Rift CV1と同じようにHP Reverbに備わっています。なので装着方法もOculus Rift CV1とほぼ同じで、ツルの部分を伸ばしながら装着します。

このことから、HP Reverbは外装の構造はOculusRift CV1を参考にして作られていると言えます。Oculus Rift SがWindows Mixed Realityっぽい構造を持っている一方で、Windows Mixed RealityファミリーであるHP ReverbがOculus Riftっぽい構造になっている、というのは、なかなかおもしろい点なのでは無いかと思います。

その一方で、フィット感は非常に高くHP ReverbはOculus Riftよりも装着感が良いです。肌に直接触れるクッション部はOculus Questと同等の素材が使われていて手触りも良く、非常に柔らかくなっています。HP Reverbはビジネス用途も狙っており、長時間装着していてもストレスが無いように、装着感にも力を入れているのでは無いかと予想します。(ビジネス版ではクッションの部分が汚れにくレザー仕様になっています。)

音質・音響

意外ですが、かなり良いと感じました。

Oculus Rift CV1は高い品質のイヤフォンを搭載していましたが、最近のHMDは耳の近くにスピーカーを搭載する流れになっています。またこれらのスピーカーはあまり品質は高くありません。Valve Indexのスピーカーは音質よりも臨場感や迫力を優先したチューニングでなかなかの品質ですが、Oculus Rift SやOculus Questのスピーカーは品質が低く、音質にこだわる場合は別途利用者がイヤフォンを用意する前提の作りになっています。

HP ReverbはOculus Rift CV1と同様に、きちんとしたオーバイヤーのイヤフォンを搭載します。音の傾向も大分似ていて非常にフラットで、音楽を聴く用途に使う気になれる品質です。Oculus Rift CV1のイヤフォンはやや低音が弱いですが、HP Reverbはそこが改善されよりフラットになったような印象を受けます。

その他に知っておくべき点

発熱する?

HP ReverbはWindows Mixed Realityのトラッキングシステムを持つため、HMD側にカメラやトラッキングのプロセッサを持ちます。加えて、液晶の解像度が高いため、他のHMDと比べてパネルの開口率が低く、バックライトの照度が余計に必要です。

そのためか、使っているとやや熱くなってきます。装着時に肌から熱さを感じることはありませんが、消費電力は高いということですのでUSB増設カードや延長ケーブルを選ぶ際には留意しておきたいポイントです。

未使用時も通電している?

OculusシリーズやVIVEシリーズは、PCに接続し放しにしていても低消費電力状態に入っているため特に不都合はありませんでした。

HP Reverbも同様に未使用時はスリープモードに入るのですが、なぜかほんのり温かくなります。これが気になる場合は、スイッチ付きのUSBハブを使うのがよいでしょう。

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ケーブル延長のハードルがやや高い

HP Reverbは2019年時点のコンシューマ向けVR HMDとしては唯一 DisplayPort 1.4を採用しています。(他は1.2です。)このため、延長に使用できるケーブルが限られています。

どういう人にオススメか?

HP Reverbはパネル解像度の高いため、網目感(スクリーンドア効果)が完全になくなるのではないかと期待していましたが、実際はバックライトのムラが網目感を感じさせる原因となっており、網目感低減に関しては他の液晶採用の機種に比べて改善はしているものの、数字ほどの貢献はしていないと感じました。

HP ReverbはWindows Mixed Realityということで若干癖があるので、単にスクリーンドア効果が低いHMDが欲しいのであれば、同様にフルRGB液晶パネルを採用しているOculus Rift SやValve Indexなどの機種の方が無難な選択といえます。

一方、描画解像度を高くしてグラフィックスの描画品質を上げた場合はパネル解像度の高さが生かされ、驚くべき映像を得ることができます。つまり、HP Reverbは利用しているグラフィックスカードの性能が高い場合に初めて選択肢に入ってくる機種です。公式の「高解像度」向け構成の要求スペックにもあるとおり、Geforce RTX 2080以上(もしくは Geforce GTX 1080Ti以上)を前提と考えた方が良いでしょう。これ未満のグラフィックスカードであれば、真価を引き出せるコンテンツはだいぶ限られてしまうのではないかと思います。

これを踏まえた上で、どういう人にHP Reverbがおすすめなのかを考えてみました。良ければ参考にしてみてください。

Oculus Rift (CV1) からのアップグレードを考えている人

Oculus Rift(CV1)のアップグレード先としてHP Reverbはオススメです。

Oculus Riftはパネル解像度が低く、ペンタイルOLEDを採用しているので、表示品質は確実に向上します。GPUをアップグレードすれば、その分だけさらに表示品質が向上します。

コントローラの使用感は若干下がりますが、トラッキングセンサーの設置も不要になり、利用場所の制約が弱くなるのもメリットです。

ただし、Oculusストアで購入したソフトはWindows Mixed Realityでは直接動かすことはできません。Reviveを使えば大抵は動きますが、完璧ではないので注意が必要です。Oculus Riftでよく遊んでいたコンテンツを遊び終わるまでOculus Riftを手放さずに手元に置いておくか、SteamVRにもあるソフトなら買い直すなどの検討も必要です。

Oculus Rift Sとどちらにしようか迷っている人

Oculus Rift Sは49800円(セール時に6300円引き)、HP Reverbは55000円と価格差は約5000円です。

Oculus RiftはOculus独占のゲームがあり、またOculusのエコシステム内で完結しているので、初心者には扱いやすい機種です。
一方Windows Mixed RealtiyはSteamVRに頼ることになる上に、一部動作がおかしいタイトルはユーティリティソフトを利用して自身で対処しなければいけません。そういう意味ではやや上級者向けです。

スペックから考えると、価格差は無視しても良いようなもの、むしろHP Reverbの方が割安なぐらいですから、プラットフォームの特性で選ぶと良いのではないかと思います。
PCの扱いに慣れているのであれば、HP Reverbの方がオススメです。

Oculus Rift Sからのアップグレードを考えている人

トラッキングセンサーの設置が不要なのはHP Reverbも同じなので、単純に解像度の向上をどう見るか、が判断基準になります。

言い換えると、1080Ti/2080以上のGPUを購入する予定がないのであれば、そのままRift Sを使い続けた方が良いでしょう。また、GPUのアップグレード予定がある場合は、まずはGPUの方に予算を割いた方がVRトータルの体験としては満足度が高いかもしれません。

ただし例外として、動画再生はGPUの性能の影響をほとんど受けないので、HP Reverbを映像鑑賞用途に使う場合は選択肢になりえます。トラッキングの精度はOculus Rift Sの方が高いので、動きまわるソフト用途ではOculus Rift S、あまり動きがない映像鑑賞系の用途ではHP Reverb、と二台持ちして使い分けられるのが理想的です。

問題はそれだけのために費用を負担できるかですが、この先セールなどで安く入手できる機会があれば検討してみてもいいのではないでしょうか。

Valve Indexからのアップグレードを考えている人

普段使いする分にはあまりアップグレードにはならないのではないかと思います。Oculus Rift Sと同じように二台持ちして映像鑑賞用途と使い分けることも考えられますが、Ocuous Rift vs HP Reverbの場合と比べ、Valve Index vs HP Reverbだと解像度差があまりないため、メリットも小さくなるのではないかと思います。

まとめ

HP Reverbは十分にアリなVR HMDでした。個人的な満足度は非常に高いです。多少惜しい点はあるものの、AV性能が非常に高い割に価格は抑えめでコストパフォーマンスも悪くないです。

かといって、最初に選ぶPC向けVR HMDとしてオススメか、といわれると微妙なところではあります。予算を抑えたいならOculus Rift S、予算が許すならValve Indexが第一候補になるでしょう。どちらかというと、HP Reverbは他の機種を既に持っていて併用するような場合に選択肢に入ってくるのでは無いかと思います。

HP Reverbを入手した際にはこちらの記事も参照してみてください。

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