TOKYO CHRONOSプレイレビュー:豪華スタッフが送るSFミステリーADV

2019年4月13日

SFミステリーアドベンチャーTOKYO CHRONOS(東京クロノス・トーキョークロノス)についてのプレイレビューです。クラウドファンディングにより資金が募られ、ユーザの声が取り入れられている点も特徴的な作品です。

SteamVR・Oculus Rift/Go/Quest・Windows Mixed Reality・Playstation VR(予定)対応、とほぼ全てののVRプラットフォームでプレイ可能で、多くの人にオススメできる仕上がりになっています。

どんなゲーム?

ストーリー

―時が止まった誰もいない渋谷。この世界に閉じ込められたのは幼馴染である8人の高校生たち。

失われた記憶。「私は死んだ。犯人は誰?」という謎のメッセージ。
私とは誰なのか。何故記憶が無いのか。そして犯人は誰なのか。

砕けた鏡のように散らばる無数のカケラ。
この世界の真実はどこに─

あなたが決めて。殺すかどうか─

以下は体験版をプレイすることを前提に、ゲームの中身やストーリーについては極力触れずネタバレを避けたレビューになっています。未プレイの方も安心して読み進めて下さい。

システム

STEINS;GATEに代表されるような、テキストと立ち絵で構成されるアドベンチャーゲームが、そのままVRになったようなシステムになっています。

登場人物は3Dで描画され、自分の周囲360°に位置しながら掛け合いが行われます。それぞれの声は立体音響により、前後左右から聞こえてきます。これらが合わさって、まるで演劇の舞台に自らが入り込んだかのような不思議な臨場感を醸し出しています。

一般的なアドベンチャーゲームと比べて選択肢は少なめです。正規ルートに向かわない選択肢を選ぶと、さらなる分岐は発生せずエンディングになります。

そのため、特に攻略サイトも見る必要も無く、簡単にルートをコンプリート出来る難易度になっています。アドベンチャーゲームの中では、ゲームとしての歯ごたえよりも、ストーリーやキャラクターを味わうことに特化した作りになっていると言えます。

進行は自動でセーブされます。そして、一度読んだチャプターにはタイトル画面からいつでもジャンプ出来るのに加えて、真のエンディングでは無い終わり方をしても、選択肢の直前からコンティニューすることも出来ます。

任意のタイミングでセーブする機能もありますが、一般的なアドベンチャーゲームのように色々な場面のセーブデータを使い分ける必要も無いため、あまり出番はありません。

スタッフ

本作の魅力は、著名なクリエータや声優陣が参加して作られた世界観です。実際どういう物なのかはディザームービーを見て貰うのが良いです。ここでは各スタッフの代表作を調べたのでまとめておきます。リンクは特に断りが無い限りWikipediaへのリンクになっています。

役割 名前 代表作
プロデューサー 三木一馬
キャラクター
デザイン
LAM
(pixiv, tumblr)
監督 柏倉晴樹
シナリオ 瀬川コウ
主題歌 藍井エイル
ASCA
キャスト
櫻井響介 上村祐翔
二階堂華怜 石川由依
桃野夕 木戸衣吹
東国ユリア 柚木尚子
神谷才 朴璐美
両角愛 桜あず
街小路颯太 植田圭輔
  • 舞台『弱虫ペダル』(真波山岳)
  • 舞台『おそ松さん』(チョロ松)
蔭山哲 梶裕貴
ロウ 木村良平

キャラクターデザイン

キャラクターは印象的で、ある意味人を選ぶところがありますが、元々のイラストが3Dモデルに忠実に再現され、表情豊かに動き回る様子をしばらく眺めていると、そういったクセも気にならなくなってきます。時間が経てば立つほど、SFミステリーをテーマにする本作にあったデザインだと思えるのではないでしょうか。

シナリオ

本作はミステリーを謳ってはいるものの、そこまで推理要素はありません。伏線が色々なところにちりばめられていますが、多くは直後に回収され、話が入り組んでいてわかりにくいという所もありませんでした。とっつきやすく適度なミステリー具合だと感じます。

そして見た目の印象よりも、青春・友情の比重が高いです。このあたりはこの作家さんのテイストのようです。公式サイトでは代表作として講談社の作品が紹介されていましたが、Amazon で一番評判のいい作品は新潮社からでているシリーズの方でした。

謎好き乙女と偽りの恋心(新潮文庫nex) 謎好き乙女シリーズ
謎好き乙女と偽りの恋心(新潮文庫) 謎好き乙女シリーズ
  • 著者 : 瀬川 コウ
  • 価格 : ¥649
  • Kindle版:279 ページ
  • 出版日 : 2016/02/01
  • 出版社 : 新潮社
  • 商品ランキング : 418,196 位

本作のボリュームは、テキスト量が文庫本3~4冊分程度だそうで、プレイ時間にすると、コンプリートまで 10時間前半から後半ぐらいを想定しているそうです。(私はテキストスピードを速めていたので12時間程度でした。)

キャスト

一部の方を除き、どこかで聞いたことがある有名アニメの声をあてている方が参加しており、キャラクターの魅力を有効に引き出していると感じました。

サウンド・音楽

このゲームで侮れないのはサウンド面です。立体音響による臨場感に加えて、主題歌も本作の雰囲気に非常に合っていて、凝ったOP・EDの演出をさらに高めています。

個人的に気に入ったのは、トゥルーエンドではない方のAlternate EDでした。 プラネタリウムのような場所で、夕焼けが映し出されて流れる音楽が非常に印象的です。真のエンディングにたどり着けなかったことが気にならない、不思議な余韻を残します。

もしHTC VIVEやPlayStation VR(今後)でプレイしていて、今は音響は特に気を遣っていないよ、という方はこの機会に環境を整えてからプレイしてみるのをオススメします。

安定性

SteamVR版のVer 1.0.0で特にトラブルも無くエンディングまでたどり着けました。

購入方法

SteamVR版でもOculus Touchに完全対応していました。Asynchronous Space Warpが必要になるほどの性能を要求しないので、Ouclus Riftを持っていてもSteamVR版を買っておけば問題ないでしょう。

公式サイトに購入ガイドがあったのでそちらをリンクしておきます。

SteamVR

体験版はページ右側の「デモをダウンロード」からダウンロードできます。

Oculus

Oculusシリーズは全て対応していますが、残念ながらクロスバイで対応ではありません。

また、SteamVRでは体験版がありますが、Oculusでは製品版しかありません。まずは体験版をプレイしたいという方は、Oculusで購入する場合もSteamVR経由で体験版を取得して下さい。

Oculus Quest/Oculus Goの場合は、ALVRのようなSteamVR連携ソフトを使うことでSteamVRの体験版をプレイすることが出来ます。

OculusRift/Oculus Rift S

Oculus Go

Oculus Quest

操作性

操作は快適です。テキストウィンドウの位置も視線に自然に追尾し、ストレス無く文章を読むことが出来ます。

このテキストウィンドウの表示方法はありそうで無かった方式で、今後のVRアドベンチャーゲームのお手本となる出来と感じました。

一つ難があるとすればテキストのスキップに対する操作が2クリック必要で、シーンごとに選び直さないと行けない点でしょうか。早送りボタンのような物があるとより快適だったかもしれません。

VRの活かし方と酔いやすさ

このゲームでは、歩くようなカメラが移動するシーンはほぼないため、酔いが発生する要素もありません。あくまでも演出のみにVRを活用しているため、視界が動くのはキャラクターの喋っている方向を向く時ぐらいです。

とはいえ、6DoF(頭の向きだけでは無く位置を検出できる)に対応しており、Oculus RiftやHTC VIVEなどの6DoF対応ヘッドセットでプレイすれば、ある程度はシーンの中を移動できます。

とはいえ、これまでの平面でアドベンチャーゲームのようにキャラクタの目立たせるために、VR空間は3倍程度のスケールで描画されており、実際の移動範囲は狭くちょっとのぞき込む程度の軽微な移動のみが可能です。

イラストから起こしたアニメ調(トゥーン)の3Dモデルは、見る方向によっては別人のようになってしまうことがあるため、ルームスケールに対応しつつ、そういった問題が起こらないように視点を制限する技法としても理にかなっています。今後出るタイトルも同様の対応を取るものが出てくるのでは無いでしょうか。

評判

評判はかなり良いようです。各種レビューサイトへのリンクを用意しておくので適宜参照してみて下さい。(ネタバレには注意して下さい。)

まとめ

このタイトルはVRの強みを演出に振り切ったアドベンチャーゲームで有り、またこれまでの同ジャンルのタイトルよりもボリュームや世界観の厚みの面で申し分ない出来になっています。なので、VRである事だけで感動できる、VRを体験して間もない人に特にオススメしやすいタイトルと言えます。

また、非VRのアドベンチャーゲームとしても値段に釣り合った内容になっていますから、キャラクターとストーリーや制作スタッフから自身の守備範囲と判断できるのであれば、買って損は無いのでは無いでしょうか。

体験版も用意されていますので是非試してみて下さい。

攻略のヒント

最後に検索でたどり着いた方のために、ネタバレにならない程度に攻略のヒントを残しておきます。

本作は分岐がほとんどありませんが、ある条件を満たすと各キャラクターのエピソードへ分岐する選択肢が登場するようになります。どうやらこの分岐を全てたどるのがクリアの条件のようです。タイトル画面のチャプター選択画面からクリア済のシナリオが確認できますので、そこに抜けがある場合は、その抜けの位置から選択肢が登場するチャプターの位置を思い出してみると良いでしょう。

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