PlayStation5でも採用されるRaytracing(DXR/RTX)の概要とデモアプリ3つを紹介

2019年4月13日

高品質な3D描画を行える技術DirectX Raytracingが、旧来のGeforce GTXでも使えるようになり、実際に動くデモが公開されたので紹介します。RaytracingはPlayStation5でもハードウェアでサポートされPlayStation5向けVRにも採用の期待が高まっている技術です。

Raytracingは今トレンドの3D描画技術で、光の反射を忠実に反映させた高品質な描画結果を得ることが出来ます。その反面、最近のGPU世代で高性能なグラフィックスカードが必要になっています。しかしながら、最近になってPCでVRを動作させられる環境であれば、このRaytracing技術を動かせるようになったので、VRとは直接関係ありませんが紹介してみます。

DirectX Raytracingとは?

Raytracingは光の軌跡をたどることで、反射を含めた忠実な描画結果を得るための3D描画技術(技法)です。この考え方自体は何十年も昔からありました。Pixarが作るような3D映像も全てRaytracingにより描画されており、これ自体は特に珍しい技術ではありません。

一方でゲームのようなリアルタイムに3Dを描画する用途では、GPUの処理性能が足りないため用いられてきませんでした。こういった用途では、正確な描画結果を諦める「ごまかし」の技法をいくつも組み合わせることで、それっぽい映像を作ってきました。例えば、Raytracingでは影は自然に求まりますが、ゲームでは影を別に計算してそれっぽく書くのが一般的でした。(現時点ではRaytracingを使った描画においても影は別に描画することが多いです。)

それが最近になってGeforce RTXと呼ばれる世代のGPUが登場し、光の軌跡をたどるための専用の回路(RT Core)を用いることで、今までは時間のかかっていた処理をリアルタイム描画可能な時間で終わらせられるようになりました。

DirectX Raytracingはこの光の軌跡をたどって描画するRaytracingを使うための機能で、この機能を使えばゲームの開発者はGPUの違いを意識する必要がなくなります。

なぜGeforce GTXでも動作するの?

Raytracingは光の奇跡をたどる描画手法ですが、具体的には画面上に描画するピクセルについて、視点から3D空間上の物体にどう光が届いていくかをシミュレーション(レイキャスト)しています。この処理をピクセルごとに繰り返すことで一枚の画像ができあがるわけです。

一方で、隣り合うピクセルであれば、シミュレーションした結果は非常に近くなります。この特性を利用して、シミュレーションを全ピクセルではなく、ある程度間引いて行い、最後にその結果をぼかして補完し合うことで、真面目に全部やった場合と似た結果を得ることができます。

こうして、専用ハードウェアでやっていたシミュレーション処理を、普段ポリゴンを書くときに使っている一般的なハードウェア上で行いつつ、処理をサボることで、同じような結果を得ているわけです。その反面、フレームレートや描画品質は下がり、画面がざらついた感じにはなります。

動作環境

DirectX Raytracingを試すには以下の環境が必要です。

  • Windows 10 1809(Windows 10 October 2018 Update) 以降
  • DirectX Raytracing をサポートしたNvidiaのGPU
  • GTX 1080ti
  • GTX 1080
  • GTX 1070ti
  • GTX 1070
  • GTX 1060 6GB
  • GTX 1660ti
  • GTX 1660
  • TITAN XP
  • TITAN X
  • TITAN V
  • 全ての RTX
  • NVIDIA Driver 425.26以降

デモの紹介

Reflections RTX Tech Demo

ダウンロード先:https://images.nvidia.com/geforce-com/international/reflections-demo/Reflections_Demo.zip

NvidiaがRaytracing技術を発表したときに同時に公開されたスターウォーズのデモです。発表当時はRaytracing専用ハードウェアであるRT Coreが無い高性能なワークステーションでデモされていました。このワークステーションは800万円ほどしたそうです。

そして、これがGeforce RTXだと一枚のカードできるようになったよ、というのがGeforce RTX発表当時の触れ込みでした。商売上手ですね。

Atomic Heart RTX Tech Demo

ダウンロード先:https://mundfish.com/en/rtxtechdemo/

Atomic Heartは、Mundfishで開発中の、ソ連時代のデザインとロボット工学、不気味なマネキン、そしてたくさんの不思議さを融合させた、視覚的に魅力的なUnreal Engine 4搭載のアクションゲームです。

反射や影などが非常に忠実に描画されており、このゲームの不気味さを一層引き立てています。

Justice RTX Tech Demo

ダウンロード先:https://images.nvidia.com/geforce-com/international/justice-demo/Justice_RTX_Demo.zip

Justiceは中国で最も人気のあるMMOの1つです。他の二つのデモと比べてRaytracingの活用は部分的で、水面や刀の反射や、光源の投射や遮蔽部分にポイント的に利用されています。RaytracingのON/OFFがリアルタイムで切り替えられるので、効果はわかりやすいデモになっています。

最後に

これらのデモはすべてUnrealEngineで作られており、UnrealEngineが持つRaytracing機能の上で動いています。このあたりはVRとの関係にも似ていますね。

Raytracing技術は物体の存在感を非常に高めることが出来るため、VRにおいても有望な技術です。一方で、光の奇跡を追従する仕組み故に、そのままではVRでは両目の分の2倍の処理量が必要になってしまいます。Simultaneous MultiProjectionのように両目の画像を効率よく生成する技術の登場が待たれます。

そもそもゲームでの普及もまだまだこれからですから、これがVRに最適化されて導入されるのはずいぶん先になるかもしれません。

2019/04/16にPlayStation5のGPUがRaytracingに対応されることが公式に発表されました。またVRにも引き続き対応するとのことですので、PlayStation5向けVRの普及が、VRにおけるRaytracingの普及の鍵になるかもしれません。

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