Oculus Rift と HTC VIVE を画質・価格・コントローラなど全方位で比較する

2016年11月14日

Oculus Rift」と「HTC VIVE」のについて、画質・価格・コントローラなどから全方位で比較していきます。

PC用のVRヘッドマウントディスプレイと言えば、Oculus RiftHTC VIVEの二つがもっともVR体験の質が高く、普及もしています。

PlayStation VRも発売されましたが、こちらはPlayStation4専用であり、どちらかというと従来型のゲームの体験を広げるオプションのような存在であり、没入感では一歩引けを取ります。

PC用としてはWindows Mixed Realityも選択肢として挙げられますが、こちらはコストや手軽さを重視したプラットフォームとなっており、Windows Mixed Realityの詳細は比較記事に譲り、ここでは取り上げません。

また、HTC VIVEには上位機種のHTC VIVE Proが存在します。HTC VIVE Proは性能も価格も別格であり、混ぜての比較は難しいので、こちらも別途用意した説明記事を参照して下さい。

以後、Oculus RiftとHTC VIVEを比較して、スペックや仕組みだけで無く私が実際に使っての感想もまとめています。

いきなり結論

実はOculus RiftもHTC VIVEもできることにあまり差はありません。OculusRiftでもSteamのソフトはほほ問題なく遊べますし、OculusRift専用ソフトをHTC VIVEで動かす方法もあります。

Oculus RiftとHTC VIVEともに値下げがされており、どんどんお買い得になっていますが、2018年12月時点ではOculus Riftの方が安くなっています。

  • 独占コンテンツが増えたり、革新的な技術が実装されるのを気長に待てるならOculus Rift、使っている人が多く勢いが良いものが欲しいならHTC VIVE
  • 3m四方ぐらいの広いスペースで使えるならHTC VIVE、それ以下のスペースで使うならOculus Rift
  • とにかくゲームを中心に遊びたいのであればHTC VIVE、色々なジャンルのVRを体験したいのであればOculus Rift

がお勧めです。以下、その理由を具体的に説明してきます。

液晶の画質と視野角

Oculus RiftとHTC VIVEともに解像度1080×1200の有機ELパネルを両目用に2枚使っており、スペックや品質はほぼ互角です。液晶の種類にどんなものがあって、何を使っているから互角、というような詳細を知りたい方は、VR液晶についての基礎知識の記事を参照して下さい。

何が何でも液晶の表示品質を重視する、ということであればもう少し予算を増やしてHTC VIVE Proを選ぶべきです。

視野角

視野角もスペック上は110度と違いはありません。しかしながら、両者はレンズの形や配置が微妙に違っており、実際に見える視野には違いがあります。

lens

こちらのブログで詳しく比較されていますが、簡単にいうと

  • HTC VIVEの方が視野角(特に上下)が広く没入感を重視
  • Oculus Riftの方は視野角が狭めで周辺が黒く、ゴーグル越しに覗き込んでいる感じになる。その反面ドットの密度が高く画質が良く感じる

ということになります。HTC VIVEはルームスケールを使って周囲を見渡す体験を重視しており、Oculus Riftは正面を見るような体験を重視して設計されていると言えます。

ルームスケール中心で遊ぶ場合は、あまり細かな画質の違いは気にならないですから、このあたりは使い方によって、どちらが優れているかが変わってきそうです。

グラフィックスの画質

HMDに映し出される画像はPCで生成しているため、Oculus RiftとHTC VIVEに大きな差はありません。PCの性能が良ければよいほど高い解像度で高画質な描画をすることができます。

しかしながら、PCの計算パワーを効率よく使っていかに表示品質を高めるかについてはOculus Riftに軍配が上がります。

Oculusは2016年10月にAsychronus Spacewarp(ASW)と呼ばれる技術を発表しました。同様の技術はまだHTC VIVEでは使えません。結果として同じ性能のPCを使った場合、描画解像度をより高く設定できるOculus Riftの方が表示品質は高くできます。

液晶の解像度が同じでも、PCの性能でなぜ表示品質に差が出るのかについては、HMDと内部解像度についての記事を、Asychronus Timewarpについてはその解説記事も併せて参照してください。

位置トラッキングの仕組みと装着時の快適さの関係

位置トラッキングの精度はHTC VIVEが勝っていると言えます。その代償として装着時の快適さはOculus Riftの方が高いと感じます。

現実の空間上にHMD装着車の頭がどの位置にあるかを検出する仕組みが位置トラッキング(ヘッドトラッキング)です。Oculus RiftとHTC VIVEではその手法が全く異なり発想が真逆になっています。

HTC VIVE

HTC VIVEは頭にかぶる本体が大きくなったり、そこから出ているケーブルが太くなってもよいので、なるべく広い範囲を正確にトラッキングすることを重視した設計になっています。

具体的には本体側にカメラを持ち、位置を把握するために周辺に配置する装置(ベースステーション)は電源のみを必要とし設置しやすくしています。装着すると前に重心があり、多少の重たさを感じます。

Oculus Rift

一方Oculus Riftはとにかく装着性を重視して長時間利用しても疲れないことを重視した設計になっています。

具体的には、本体側にはLEDだけを搭載し、トラッキングにはPCに接続したカメラの情報を利用するようにしています。本体の表面が布でできている上にネジを一切使用していないというから驚きですね。

結局どっちが良いのか

大きな部屋でVRを使う場合、PCから離れた位置にベースステーションを設置できるHTC VIVEはかなり優位性があります。

また、正しく設置すればトラッキングを見失うことも無く、完成度は高いです。特にトラッキングが外れると、ヘッドマウントディスプレイに映し出される画面が不自然になり、VR酔いを招くため、この差は大きいです。

Oculus Riftもでも延長ケーブルや増設カメラなど利用すれば同等のことができるため悩ましいところです。もちろんカメラを増設する場合、追加のお金がかかりますし、HTC VIVEと同等までのプレイエリアにはなりません。

一つだけHTC VIVEの劣る点は、頭の前面でしかトラッキングできないことです。つまり、センサーがとらえられないような状況、例えば床にうつぶせになるような状態だと簡単にトラッキングが狂います。

こんな体勢になるソフトは,滅多にないでしょうが注意が必要です。Oculus Riftは後部にもLEDが仕込まれているため、狭い範囲であればカメラが少なくても大分自由度は高いです。

一方で、Oculus Riftは追加のセンサを購入しても、トラッキングが外れたりするなど長らくルームスケール時の問題が指摘されていました。ですが、2017年3月のシステムバージョン1.12あたりから動作が大幅に改善されました。

まとめ

総じてHTC VIVEの方がトラッキング性能が良く限界距離には差があるものの、精度はOculus Riftもバージョンアップにより追い上げている状況です。

より詳しくはこちらも参考にして下さい。

入力デバイスの違い

Oculus Riftが勝っていると言えますが、今のところそこまで差はありません。

HTC VIVEにはスティック状のモーションコントローラが標準添付されています。Oculus RiftにもOculus Touchと呼ばれる握りこむタイプのモーションコントローラが用意されてます。Oculus Touchは後発で、初めは別売りでしたが、現在はOculus Riftに同梱されセットで販売されています。

この二つでできることはあまり大きな差はありませんが、HTC VIVEはVR空間に網状のコントローラを持ち込むことがコンセプトであるのに対し、Oculus TouchはVR空間に自身の手を持ち込むことをコンセプトにしています。そのため、うまく使っているソフトではOculus Touchの方が没入間が高いです。

ただ、残念ながら、多くのVRタイトルではVR空間上に剣や銃と言った物を持ち込むことがおおいため、Oculus Touchの良さを生かし切れているとは言いがたいです。このあたりは今後に期待する状況、といえます。

とはいえ、後発な分、Oculus Touchの先進性や軽さはHTC VIVE比べて十分な優位性があります。

音質・ヘッドフォンの違い

Oculus Riftが勝っていると言えますが、多少好みがあります。

Oculus Riftにはヘッドフォンが内蔵されています。その代わり、接続が専用端子になっており、自分の好きなイヤフォンやヘッドフォンは使うことができません。ただ一つだけカナルタイプのイヤフォンがオプションで販売されています。

HTC VIVEにはイヤフォンが添付されているものの、汎用のヘッドフォンジャックがヘッドマウントディスプレイ上に用意されており、基本的には好きな物をつかってくれ、というスタンスです。

ヘッドフォンの装着性

Oculus Riftのヘッドフォンは装着性が非常に考えられており、とても快適です。ヘッドマウントディスプレイを取り外しするときにも煩わしさがありません。

HTC VIVEはイヤフォンだったりヘッドフォンをヘッドマウントディスプレイとは別々に付け外しないと行けないため、少々やっかいです。Oculus Riftと同じようなヘッドフォンオプションもありますが、後付けな事もあってケーブルが外に出ており、少々不格好です。

音質と遮音性

Oculus Riftのヘッドフォンは音質が非常にすばらしいです。1万円~2万円クラスのヘッドフォンには余裕で勝っています。一方で、オープンエアータイプに近い作りをしており、音漏れが割とあります。音量を絞ればそこまで気にすることは無いですが、利用用途によっては注意が必要です。

そのため、Oculus Riftにはオプションでカナルタイプのイヤフォンが用意されています。こちらも数万円クラスの製品に匹敵する品質で5980円、という触れ込みです。筆者は試したことはありませんが実際評判は上々のようです。

HTC VIVEは標準の音質は特筆すべき物はありません。好きな物を好きに使うスタンスなので、使う人がお金をかければ音質はそれなりによくはなるでしょう。

対応プラットフォーム

一部HTC VIVE独占のソフトがあるものの、基本的にはOculus Riftの方が体験できるタイトルが多いと考えて下さい。

Oculus RiftとHTC VIVEそれぞれに専用のストアがありますが、HTC VIVEのストア(HTC port)は独占配信のソフトはほぼなく、存在しないも同然です。一方Oculusのストア(Oculus Home)では、Oculusが多額の投資をして開発した独占ソフトが配信されています。これらのOculus Rift専用ソフトはReviveと呼ばれるエミュレーションソフトを使えば動かせないこともないのですが、敷居は高いです。

一方で、広く遊ばれているソフトのほとんどはSteamで購入できます。Steamのソフトウェア開発キットであるOpenVRはHTC VIVE用モーションコントローラとOculus Rift用モーションコントローラ(Oculus Touch)を区別していないので、Steamにおいて対応ソフト数はほぼ同じです。

価格と購入方法

以前は、両方とも11万円近い価格で大きな差が無い状況でした。むしろ、Oculus Riftで三つ目のセンサを増設する場合は、Oculus Riftの方が合計金額が高くなっていました。ですが、Oculus Riftの値下げ後はOculus Riftの方が安くなっています。詳しくは製品構成を比較した記事を参照して下さい。

HTC VIVEは国内の通販サイトやPCショップの店頭で購入できるので、一見とっつきやすいように見えますが、箱が大きく、重量も7kg程度あるので通販で買うのが無難です。ですが、店舗で体験しやすいメリットも捨てがたいです。

Oculus Riftは海外からの発送になり、クレジットカードが必要です。また届くのに数日の時間を要します。最近Amazon.co.jpでも買えるようになりましたが、一部オプションは従来通り公式サイトから購入必要があります。

サポート体制も大体同じです。HTC VIVEの場合初期不良は店頭で交換してもらえますが、サポートは台湾HTCが行います。修理も香港へ発送します。Oculusも修理センターが香港に有り事情はほぼ同じです。両方とも日本語でのメールサポートがあります。

サポート体制はHTC VIVEが充実してきたようで、修理も国内で受け付けて貰えるそうです。一方Oculus Riftはメール(日本語)でやりとりした後、海外に送る必要があります。購入相談も含めてあまり手間をかけたくない人は、ここが決め手になるかもしれません。

どちらが売れているのか?

HTC VIVEの方が価格が高いのにもかかわらず、売れ行きはこちらの方が若干良いです。OculusRiftはOculus Touch と呼ばれる専用コントローラやルームスケール対応の時期が遅く、先進的なVRを体験できるのはHTC VIVEというイメージが定着したためです。

そのためOculusRiftが劣勢になってはいますが、値下げを繰り返しており、2017年の夏頃の期間限定セール以降、若干風向きが変わっています。できることはあまり変わらないため、値下げに便乗した方がお得です。

一方で、日本では代理店が頑張っていた影響でHTC VIVEの方が普及率が高くなっています。そのため、ユーザ数の違いから日本語の情報が得にくかったり、目当てのソフトの正式サポートが遅くなったりするリスクもあります。

最後に

VRはまだまだこれからであり、おそらく追いつけ追い越せの状況が続きます。どちらかが一方が優れていたとしても、次の年には改良版が出ることでしょう。だからと言って様子見をするのは非常にもったいないです。VRの体験はこれまでとは一線を画すものであり、新しい試みが出るたびに驚きを感じられます。

というわけで、Oculus RiftとHTC VIVE、設計思想に共感したり将来性が感じられる方を購入し、VRの発展を楽しみながら見守るというのも悪くないと思います。

高い買い物ではありますが、必ずその価値はあるはずです。まだまだ情報が少なく、価値ある体験をするには情報収集が必要な状況ですが、それをこのサイトでお手伝いしていければと考えています。

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